麓の狐(ふもとのきつね)
昔、麓に庄吉という猟師がいました。ある日、狐を捕らえようと思って、ときどき狐の出てくる林の中に罠をしかけました。狐はネズミの天ぷらが大好きだと聞いていたので、天ぷらを罠のえさに付けました。そして庄吉は友達の家に遊びに行き、夜遅くまでカルタ遊びをしていました。すると夜中に、家の戸口の外から庄吉の名を呼ぶ聞こえました。
「庄吉、庄吉!罠のえさにネズミの天ぷらを用いてはよくないぜ。二度と用いてはくれるなよ。」 だれの声だろう。庄吉にはわかりませんでしたが、カルタに熱中していたので、そのまま聞き流しました。翌朝、林へ行ってみると大きな古狐が罠にかかって死んでいました。庄吉は昨夜の呼び声を思い出しました。
-俺にネズミの天ぷらを用いるなと呼びかけたのは、きっとその古狐に違いない。好物の天ぷらは食べたい。しかし、食べれば罠にかかって死なねばならぬ。わかっているが、匂いを嗅いだ以上は、ぜひ食べたい。それで古狐は俺の遊んでいた友達の家まで来て、俺に言葉をかけ、そして天ぷらを食べて罠にかかったのであろう。- と、庄吉は古狐が気の毒になりました。
-自分などは、おいしい物が食べたいと思えば努力次第で存分に食べることができるのであるが、狐や狸にはそれができないのだ。人間の身をもって生まれたのは幸せであった- と思ったということです。
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