すこやか やひっ子「不登校」SSWのつぶやき

~学校に行きにくくなっている子ども達に接しているSSWの現場から~

 

編集・・・長田 美智留氏(弥彦村教育委員会スクールソーシャルワーカー)


①家族からの「愛」の示し方

 名前を呼ぶ。普段の生活の中で子どもの名前を意識したことはあるでしょうか?子どもに何か伝えたいとき「名前 を呼ぶ」ことは大きな効果があります。

②なかなか起きない息子に朝、苦戦しているとき

 「おはよう太郎」「太郎おはよう」一度名前を付けて読んでみてください。頑張って登校して帰ってきた娘に「花子おかえり」「おかえり花子」伝えたい気持ちをさりげなく名前に込めてみませんか?世界で唯一無二のあなたの子どもに産まれたときつけた名前を使ってみましょう。

③ あいさつの効用

 思春期になると何となく大人が疎ましく感じたり反抗的な態度をとってしまったりする子ども達が増えてきます。親や家族はどう接したらいいのか戸惑い普通の会話が成立しにくくなって困っていますという相談もあります。そんな時、ぜひ試して欲しいのは日常的なあいさつを交わすということです。

④学校に行きにくくなり1年近く部屋にこもりがちになっている中学生男子とお母さんの話

 お母さんは一人で息子さんを育てているので仕事を毎日頑張っています。自分はこんなに頑張っているのに、息子は相変わらず自分の部屋にこもりロクに会話もありません。イライラしている様子だけは伝わりますが、息子がいったい何を考えているのか?わからないのと不安な気持ちがごちゃ混ぜになっている苦しい毎日だったそうです。 お母さんに仕事に出かける時、部屋にいる息子に向かって玄関から大きな声で「行ってくるね」と声をかけてもらいました。お母さんは最初の一声を出すにはかなり勇気がいったといいます。最初は反応なし。反応がなくても一週間は同じことを続けてくださるようお願いしました。

 一週間たったころに息子の部屋から「う・ん」という声が聞こえたとのこと。その後「行ってくるね」「うん」から「行ってくるね~」「うん」に変わるまでそれほど回数がかからなかったと言います。「何を考えているのか不安」「どう接したらいいのか迷う」思春期のお子さんとの自然な接し方に困っている保護者の方は案外たくさんいらっしゃいます。いきなり深い話ができなくとも日常的な会話で子どもの心にふわっと温かさを注入できるのが家族の持つ特別な力である気がします。

 毎日の「うん」の声の表情の変化にこのお母さんは気づきました。元気がなさそうな時の夕食には「スタミナつけてね親子丼」とか、お風呂を洗っていてくれた日には「ありがとうプリン」など楽しみながら工夫を始めました。息子さんは徐々に表情が柔らかくなり部屋から出やすくなったようです。

⑤食べることは生きること「お弁当の効用」

 おうちにいる子どものお昼ご飯はどうしていますか?自分で昼食を作れるエネルギーのあるお子さんには材料の確保が最優先です。その他の場合はお弁当も有効な方法です。豪華なものでなくても応援メッセージにつながります。自分のお弁当と同じお弁当を作って家に置いてきて「今日は何から食べた?」と聞いてみるというお母さん。子どもが好きな卵焼きを毎日必ず入れていくというお母さん。「今日のは甘かったね」と毎日の親子の話題になっているらしいです。お弁当を開く時に家にいる子どもの顔を必ず思い浮かべるというお母さん。お弁当を真ん中に親子がつながっていくことは多いようです

⑥ K男のつぶやき

 2年間家にいて、3年生の夏休み以降から登校を始めたK男さん。高校受験の決意を固め冬休みは図書館で一日中勉強をすることに決めました。喜んだお母さんはK男さんの好きな物満載の保温機能つき愛情弁当を作り持たせました。その日の帰宅後、K男さんが「明日からはおにぎり二個だけ作ってくれ」と頼んできました。「今日のお弁当が気に入らなかったのか・・」とお母さんは残念で下を向いてしまったと言います。「あったかい弁当を腹いっぱいたべちゃうと眠くなっちゃうからさ。合格するまでおにぎり二個で頑張ることにきめたんよ」思ってもみなかった言葉がK男さんの口から飛び出しました。「大人になったんだなあ」お母さんは胸がジーンとなったと教えてくれました。



子どもは迷い混乱状態にもなりますが静かな伴走者がいることで「自分のことを自分で決める」ことができるようになり、安全基地から外の世界に向かってTRYを始められることが多いように感じています。


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