⑧不登校
編集指導・・・長田 美智留氏(弥彦村教育委員会スクールソーシャルワーカー)
<不登校の主な8つの原因とその対応方法>
① 学校生活によるトラブル(いじめ、集団生活が苦手、教師と合わないなど)
社会問題にもなっている”いじめ”が原因で不登校になる児童は全国で0.5~2%程度とされており、友人間のトラブル(8~15%)といった出来事のほうが、不登校の原因となりやすいというデータが出てい ます。しかし、学校側でいじめと認定されていないだけで、実際当事者である子どもは「いじめられた」と思っている場合もあるので、実際は2%よりも多い数の生徒が、いじめにより不登校になっている可能性があります。
不登校の傾向が出てきたからといってむやみに心配するよりも、子どもの話をゆっくりと聞き、合わない人もいれば合う人もいる、自分が疲れない適度な距離で接しても大丈夫といった言葉で、子どもの心にある負荷を取り除いてあげることが大切です。特にいじめだった場合、それを両親に話すことは非常に勇気がいりますから、優しく受け止めてください。
その上で、特別教室や保健室登校といったところから復学を目指すなど、環境を変えるということを考えていくと良いでしょう。 ② 無気力
不登校の原因で最も多いのがこの無気力です。小中学生では25.9%、高校生では30.1%もの児童生徒が不登校の理由に無気力をあげています。受験で燃え尽きてしまった、学校での生活が理想と違った、期待に応えようと頑張りすぎて疲れたなど、子どもによって理由は様々です。
無気力になっているところに、「学校へ行け!」「勉強しろ!」と言ったり、無理やり保健室登校などをさせたりしても復学に至ることは難しいでしょう。まずは本人を休ませ、無気力から前に進みたい気持ちを取り戻すことが先決です。
ただし、ただ家にいて昼過ぎに起きて朝方に眠りネットやマンガ漬けになってしまうと、更に無気力が加速しまうので、生活リズムを家族に合わせる、おつかいやお出かけに付き合わせるといった、メリハリのある生活と外の世界との接触は継続するようにしましょう。
③ 非行・遊び
非行や遊びといった理由も不登校の原因の9~13%を占めて、決して少ない割合ではありません。原因はひとつではありませんが、家庭での問題が影響していることが多いようです。
・家庭内の不和から居場所を無くし、悪い友人と一緒にいるようになった
・勉強やスポーツなど、自分自身ではなく成果しか褒められないのが嫌になった
・友人関係、勉強、将来についてなどに対し、親の干渉が厳しすぎたため
・親が自分に無関心であると感じ、意識を向けさせたい
このように問題行動は、”理想の子ども”でいることへの反発であることが多いのです。親の都合の”いい子”であることや、頭の”いい子”でいることを評価するのではなく、健康で元気に過ごせているだけで十分だと伝えたり、思いやりを見せてくれた時には感謝を伝える、といったことで、子ども自身を認め、愛情を示すことが大切です。
④ 学業不振
学業不振も、不登校の原因のうち8~9%を占めています。成績が伸びない、勉強が難しくてついていけないといった理由から、授業や試験が辛くなり学校に行かなくなります。
対策としては、やはり学力を上げることが必要となってきます。小学生であれば、家庭で親が教師代わりを務めてあげることが有効でしょう。子どもの興味があることや、好きな教科を中心に勉強を進めてみましょう。ただし、「なんでこんな問題もわからないんだ」といったように子どもを責めてしまうと、更に勉強嫌いを助長させてしまいます。
中学生や高校生でのつまづきは、分からなくなった部分から勉強することが大切です。個別指導の塾や家庭教師を利用して、しっかりと学び直しましょう。このように学力のサポートを行うことで復学に備えた環境を作ることが大切です。
小学生の児童に多いのが、親と離れることによる不安や自立心が育っていないという理由です。内面が未熟であるため、運動や試験などの苦手なことがあると学校を休みたがったり、生活習慣が身につかない傾向があります。また、落ち込んでいるように見えても、学校へ行くと楽しそうに過ごしているため親は安心するのですが、またすぐに学校へ行かなくなるということを繰り返します。
このような場合は、急に改善することが難しいため、先生や家族、専門機関の継続的なサポートを通して、子どもの内面が成長していくことを長期的に見守ることが大切です。
⑥ 家庭環境(金銭的問題、介護、家庭内不和など)
親の離婚や、リストラによる生活の困窮といった家庭環境の変化をきっかけに不登校となる子どもも3~5%程度存在します。実際はその事実が辛くて…というよりは、離婚やリストラのストレスで親自身が余裕のない生活となってしまうことから、子ども自身もストレスを感じ、学校や家族と関わることを避ける場合が多いのです。ここで夜遊びなどの非行に走ったり、自室に閉じこもったりと、子どもが見せる反応はさまざまです。
親も、子どもに心配をかけないようにと必死になりますが、それは子どもにも伝わっています。また、親自身のストレスが大きい場合、自分はこんなに子どものために頑張っているのに、なぜ子どもは自分を困らせるようなことをするのか? と無意識に子どもを責めてしまいがちです。しかし、子どもも苦しい気持ちを親に打ち明けられず、心配をかけたくないため、お互いにすれ違いが生まれてしまいます。
子どもには楽しんだり、勉強をしていいことを伝え、辛い気持ちをお互いに話し合うことが親子の溝を埋めてくれるかもしれません。
⑦ 発達障害
教科によって極端に学習の遅れが見られる、同じ年齢の子ども達と遊ばない、文章の理解に普通よりもあきらかに時間がかかるなどの特徴がみられます。知的能力には問題がなくても、「聞く」「話す」「読む」「書く」ができない場合(LD:学習障害)や、静かにしなければならない場面でどうしても静かにできないといった注意欠陥多動症(ADHD)も、発達障害の一部です。
こういった子どもには、専門的な知識をもったカウンセラーや、担任教師と一緒に継続的サポートを行う必要があります。個別指導を取り入れながら、子どもにとって最も良い学習環境を整えてあげることが大切です。
⑧ 神経症
強いこだわりがある、理由もなく不安になる、気分的な落ち込み、対人恐怖症になるなど、ストレスによって何らかの精神的負担や行動ができなくなるなどの症状を、神経症といいます。神経症と思われる、不安などの情緒的混乱を不登校の原因とする児童は16~26%程度おり、高い割合を占めています。
他の原因から二次的に派生することも多いのですが、中には精神疾患の初期症状としてこの神経症が出ている場合もありますので、上記した傾向が強いようであれば、まずは医者などの専門機関に相談してみることが大切です。
<子どもが不登校になった時、親は何をするべきなのか?>
① 父親と母親がコミュニケーションを取る
子どもは、父親と母親がどんな関係か、どんな会話をしているかということを、親が思うよりもしっかりと記憶しています。喧嘩ばかりする、夫婦間での会話がない、子どもに夫や妻の悪口を言う、という環境にいると、子どもは親のことを信頼できなくなり、ますます心を閉ざしてしまいます。また、子どもが親に相談をしたとき、父親と母親が言っていることがあまりにも違うと、子どもは混乱し自分の行動を決めかねることになります。
子どもの将来について、夫婦の将来について話し合い、しっかりとコミュニケーションを取りましょう。
② 子どもの行動や言動を記録する
学校や、支援センター、カウンセラーに相談する際、子どもの気になる行動や言動をきちんと伝えることで、適切なアドバイスが受けられ、注意して接してもらえるようになります。
行動には、子ども自身も意識していない不安や不満が表現される場合もありますので、子どもの気持ちを理解することにも役立てられます。
③ 勉強をする環境を用意する
不登校となった子どもがまず低下しやすいものが学力です。学力が低下することで、「学校に戻っても勉強について行けないんじゃないか」という不安が増し、ますます学校から足が遠のいてしまいます。更に、学校での勉強という大きな習慣がなくなるため、マンガやテレビを見て過ごす生活に慣れてしまい、夜更かしやひきこもりといった生活の乱れが加速していきます。
教室には行けないが、学校には行ける、という子であれば特別教室や保健室登校を。 学校には行きたくない、という子には、フリースクールへの登校や、不登校児のための塾の利用、家庭教師といったサポート機関を利用して、学習を継続できる環境を用意しましょう。
④ 家庭での役割を与える
外に出ることが困難だったとしても、まずは家族という社会の中で、子どもが社会性を損なわずに生活をしていけるよう、些細なことでもいいので子どもに役割を課しましょう。
例えば、食器洗いでも、洗濯物をたたむ、でもなんでもいいのです。子どもが興味のあることがあれば、それを役割として任せてもいいでしょう。例えば、お小遣い帳をつけるのが好きだったら、家計簿をまるごと任せてもいいかもしれません。料理が好きだったら、献立を考えるのを任せてもいいかもしれません。
任せるのと同時に、実際に子どもがやってくれたら「ありがとう、助かったよ」といった言葉をかけることも重要です。
また、子どもができない日があったとしても、責めるのではなく「また今度お願いしてもいい?」といつでも頼りにしていることを伝えるようにしましょう。自分は人の役に立っていること、失敗してもやり直せばいいことを少しずつ感じられる環境が大切なのです。
⑤ 自立や学歴の重要性を伝え、選択肢を一緒に考える
不登校となり、ある程度の時間は子どもにも休息が必要でしょう。しかし、何年もそのまま不登校を続けている間に、子どもは年を取ります。そして親ももちろん年を取るのです。就職したり大学を出た人でも、再就職が大変な世の中で、30代、40代で職歴・学歴無しの人間が自立できるだけの収入を得続けることは、簡単なことではないと言わざるを得ません。
こういった事実を親は子どもに伝え、どうしたらいいかを一緒に考えることで、子ども自身も考えるきっかけを得られるでしょう。なお、家庭の金銭状況や、問題についての事実を元に条件を提示すること(「私立に行くなら奨学金を借りて欲しい」「実家にいるなら◯円は家に入れること」 など)は大切ですが、医学部以外はダメ、正社員以外はダメ、◯◯県以外はダメ、といった条件をつけることは控えましょう。
【参照】
不登校サポートナビ(https://www.futoukou-navi.com/)
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